重国籍容認に関する
衆議院法務委員会欧州法制度視察団
懇談会(於パリ)

IST請願の会発起人 高川 憲之

 平成16年7月25日午前10時より、パリのヒルトンホテルにて衆議院法務委員会の欧州法制度視察団と重国籍容認を求める欧州在住の請願者との懇談会が行われた。出席された法務委員会の委員は次の通り。

自民ー柳本卓治委員長、下村博文理事 民主ー佐々木秀典筆頭理事、山内おさむ理事
公明ー富田茂之委員
この他に柳本委員長夫人、衆議院法務調査室関根主席調査員、法務省刑事局黒川参事官、在仏日本大使館領事部青柳氏他1名の計10名が視察団側から参加された。

 請願者側から(略敬称)は、片川喜代治(在仏日本商工会議所会頭)、早間玲子(建築家、在仏日本人会副会長)、野沢尚子(ヴァイオリニスト)、佐々木真紀子(画家、美術教師)、島村真樹子(画家、国際結婚を考える会、ドイツ)、柿崎直文・久子(北海道人会)、谷かずひこ(北海道人会、スポーツライター)、ピレー千代美(仏航空)、茂呂和子(画家、カトリックセンター)、高川憲之(イスト請願の会、スイス)、以上11名が参加した(島村はIST請願の会にも参加しており、高川は国際結婚を考える会にも参加している)。

 懇談会は柳本委員長の挨拶、今回の懇談会のお膳立てをされた上、懇談会の進行をも務めた、佐々木筆頭理事の挨拶、請願者側参加者の意見発表、法務委員の感想・所見発表の順で進み、予定時間をやや過ぎた午前11時半過ぎに終了した。

 柳本委員長の挨拶では、本法務委員会は委員に弁護士である人が3人もいて、本年の通常国会においては、新しい日本のために法制度改革を行うべく、党派を超えて異例の長時間にわたる審議を行ったなど、情熱のある法務委員会であることを述べられた。次に重国籍容認の請願は、国籍唯一の原則から採択されなかった事、しかしながら法務委員会では重国籍容認に深い関心を寄せている事、今回の様に法務委員会が請願者と直接懇談を行った事は過去に例がない、異例中の異例である事、さらには海外でのこの様な懇談会という事についても前例がない事などを説明された。

 佐々木筆頭理事は挨拶の中で、法務委員会の中で唯一の野党となってしまった民主党として、重国籍容認は支援すべきと心得ているが、50年に一度といわれる司法改革を、党派を超えて行っている現在、自公両党とも連携を取りつつ着実に進めて行きたい旨を説明された。

 請願者側の意見では、

  • 重国籍の容認を求める声は実に沢山あって、切実である
  • 戦争花嫁や、やむを得ず国籍喪失となったなど、日本国籍を喪失した人に、人道的に重ねて日本国籍を与えてほしい
  • 大きな流れとして、世界が一つにまとまりつつある現在、日本も脱皮した考えが必要である
  • 国際社会では重国籍である存在が何世代にもわたる国際交流をつくりあげている
  • 国籍選択届けは苦渋の選択を強いるもの、また国籍留保届けは不平等を招き双方とも廃止すべき
  • 重国籍は防ぎようがなく、また重国籍を認められている人もおり、法制度が中途半端となっている

など、法的矛盾や、時代の潮流、重国籍が認められない為の、不利益、不便さなどが挙げられた。特に、現在国籍選択を迫られている子供を持つ母親の、国籍選択によって心が二つに引き裂かれる様な苦しい心情が述べられた時は、参加者全員にその心痛が伝わった様に感じられた。

 各法務委員の感想・所見では、公明党の富田議員が最初に発言された。議員は自分も10年前に重国籍である人のおかげで助かった経験などを示され、重国籍を求めている人たちの気持ちは理解できると言われた。しかし、必要なんだという議論だけでは法改正には少し足りないのではないかといわれた。例えば、日本の特徴とも言える戸籍制度、そういう法制度に照らし合わせて、重国籍に関する議論を深めるなども必要なのではないかと助言された。

 自民党の下村議員は、ご子息がイギリスにおられ、身近な問題と受け止められる。出来るだけ前向きに、パイプ役にもなって行きたいと言われた。

 民主党の山内議員は、今回パリで素通りする予定だった旅程はもったいなく、是非ともパリに住む日本人の声を聞きたいと佐々木議員に提案し、佐々木議員と今企画を委員長に提案したいきさつを説明された。委員長も承諾され、懇談会が実現されたのは喜ばしい事、そしてこれからも重国籍容認については議員の運動として取り組んで行きたいと述べられた。

 柳本委員長は、ご自身が委員長である立場から、この懇談会が異例中の異例で催された事以上に突っ込んだ発言は差し控えさせて下さいと述べられた。しかしながら、請願者一人一人の発言が大変身に詰まされるものであり、今後検討していきたいと述べられた。

 最後に佐々木筆頭理事が総括され、衆議院法務委員会は請願者との、しかも海外での懇談という先例を作った。重国籍の問題は簡単には進まないが、これを契機として、様々な事情を積み重ねながら、各党で「これなら」と納得できる重国籍容認の法改正を求めて行きたいと述べられた。また、この懇談会が大変有意義であったとも述べられた。

 今回の懇談会にあわせて集約された国際結婚を考える会や個人の請願署名は、懇談会の席上で紹介され、それぞれ議員個人が一部受理するなり、後日送付によって受理するなりの運びとなった。

 重国籍容認を求める立場として、この懇談会は価値ある一歩であったと思われる。自民党の下村議員は、自らパイプ役になりたいと述べられた。また、同じく与党である公明党の富田議員の発言は、重国籍を求める気持ちは十分に伝わっている。しかしこれからは現状の法制度、例えば戸籍制度などと照らし合わせ、議論を深める必要があるだろうと道を示された。またこの価値ある一歩は、民主党という躍進野党の重国籍容認に向けた明確な姿勢があって、初めて為されえた成果とも考えられる。

 特筆すべきは、柳本委員長夫人の参加だった。委員長夫人は終始請願者の陳述を傾聴し、まるで自分のことの様に心痛の面持ちで受け止めておられた。ご夫人は、みなさんのお気持ちは大変伝わりました、是非これからもがんばって下さい、と述べられた。重国籍容認を求める気持ちは、ご夫人の心を動かしたのだ。

 請願者側の面々も格別だった。在仏日本商工会議所・会頭片川氏の発言は、経済界の有力者の発言として説得力があった。また在仏日本人会副会長早間氏の発言も、海外在住日本人の声を代弁するかのような発言だった。両氏の主張には共通点があって、重国籍容認は国際社会で生き抜く日本のためになるという事だ。それが片川氏は経済から、早間氏は社会という視点から語られた。

 今回の懇談会を経て、重国籍を求める在外邦人の声が、パリから大きなうねりを作り上げ、そしてそのうねりが世界へ広がろうとしている、そんな印象を持った。その影には、懇談会参加者らの成功に向けた地道な努力があり、それに関わった方々に対しては感謝の念に絶えない。