複国籍容認と日本版US-Visit法の廃止

を求める国会陳情報告

平成20年4月29日

高川 憲之
 IST請願の会代表 国際結婚を考える会海外会員
 Mixi複国籍を認めてもらうコミュニティ、日本版US-Visit法反対コミュニティ管理人
同行者 鍵谷 智(行政書士 外国人入管手続研究会代表 IST請願の会会員

去る4月2日、国会へ複国籍の容認と日本版US-Visit法の廃止を求める陳情に行きました。陳情に際して、衆議院議員2名、参議院議員3名に複国籍の容認を求める請願書を提出し、このうち、土肥衆議院議員、千葉参議院議員に日本版US-Visit法の廃止を求める請願書を提出し、他の衆議院議員1名、参議院議員2名に日本版US-Visit法の廃止を求める要望書を提出致しました。

今回参議院議長にも面会頂きましたが、議長は請願の取次ぎ議員にはなれないため(請願を受け取る側になる)、複国籍の容認を求める要望書と、日本版US-Visit法の廃止を求める要望書を提出致しました。議長にはWebサイトで集約した複国籍の容認、日本版US-Visit法廃止の電子署名をそれぞれ印刷し、提出致しました。また、これらの文書の他、あらかじめ用意した陳情資料をそれぞれ提出致しました。

各議員とも快く請願書を受理して下さり、また議長も要望書を快く受け取って下さいました。日本版US-Visit法の廃止を求める要望書を提出した議員には、次回より請願書を取り次いで下さるお約束を頂きました。

請願書と要望書の違いですが、文面は全く同じで、これに実際に署名をつけ、文書名を請願書としたものが「請願書」で、署名をつけず、文書名を要望書としたものを「要望書」としました。

複国籍の容認を求める請願の提出署名数400、日本版US-Visit法の廃止を求める請願の提出署名数116、議長に提出した電子署名のうち、複国籍の容認を求める署名数272、日本版US−Visit法廃止を求める署名数28、以上が今回の署名提出数です。署名の提出数が少ない理由ですが、複国籍の容認を求める請願については、都合上昨年スイスで集約し、取り置いた約半分の署名のみを今回の請願に利用したことによります。昨年の日本集約分と本年度の集約分は、秋の国会以降に提出を予定しています(現在2000筆強の署名協力を頂いております)。日本版US-Visit法廃止については、今年2月に署名活動を始めたばかりだったことによります。

今回の陳情で面会いただいた議員は以下の通りです。
衆議院土肥隆一議員
衆議院岩國哲人議員
参議院浜四津敏子議員
参議院千葉景子議員
参議院ツルネン・マルティ議員
参議院江田さつき議長

陳情内容は
・複国籍容認の請願を是非とも国会で採択して頂きたい事
・複国籍容認について所属政党のマニフェストに挙げて頂きたい事
・特に国籍選択制度については、これから毎年1万人以上が選択の期限に達するため
 対応が急務となっている事
・日本版US-Visit法を廃止して頂きたい事

を中心に陳情致しました。また、Mixiというインターネットのコミュニティで、複国籍を望む声と日本版US-Visit法に反対する声が上がっていること、海外の日本人親睦団体においても注目を集め始めていること、日本国籍を喪失して辛い思いをしている、日本人画家横井さんの例などを紹介しました。

複国籍の容認に理解を示して下さっている各議員の対応は大変感謝すべきものでした。一様に、この要望に対して進展がない事について残念でいる旨を述べられておりました。また、難しい課題であるけれど、請願を続ける事が政府への圧力となるので、引き続き請願をされるように勧めて下さいました。皆さん、本当にお忙しい中お時間を作って下さり、また真摯にご対応頂き、大変有難く思っております。岩國議員にはわざわざ議員会館出口まで見送って下さり、大変恐縮致しました。

江田参議院議長との面会には、国会議員の付き添いが必要でした。その労を受けて下さったのがツルネン・マルティ議員でした。ツルネン議員は委員会等のお仕事の短い合間を縫って、付き添いの役を務めて下さいました。議員会館から公用車に乗せて頂き、議長公邸へと向いました。

議長公邸はよく首相官邸などがテレビに出て来ますが、あの様な感じの建物でした。庭が広く、東京のど真ん中にいる様な雰囲気が微塵もありませんでした。衆参両院の議員会館の各議員事務所は一様に二間になっており、その狭さはまさに日本の住宅事情を象徴する「うさ○小屋」なのですが、議長公邸はまさに大邸宅であり、そのあまりの違いにびっくりしてしまいました。入り口で公邸の職員が並んでご挨拶に立たれ、普段ねずみの様にうさ○小屋を徘徊する私はすっかり緊張してしまいました。

そばにツルネン議員がおられ、ここで色々な会合が開かれるのだとか説明して下さり、多少緊張も収まりました。いよいよ時間となり、2階の会議室に案内されました。ここも広々としたところで、議長を初め、職員や秘書の方々総勢8名程のお出迎えを受けました。今までの国会陳情で、8名もの方々のお出迎えを受けた事はありません。それもこの陳情のために皆さんがお時間を割いて下さっている訳で、大変ありがたい思いと、気の引き締まる思いがしました。

江田議長は早くからこの請願に理解を示して下さっていた方で、口では「大変難しい問題だ」と仰るのですが、多くの国会議員に根回しをして下さっておりました。私もいつも新しい情報を届ける様に努力していますが、理解を示してくださっている方として親しみを感じております。

その議長が改まって「で、今日はどの様な陳情で参られましたか?」と切り出された時は、きっとこの言葉は、後ろに座っている職員の方々にもよく聞く様にとの意味が含まれていると察しました。後ろに座っている職員の方は私には見えない位置にいるのですが、恐らくは国籍問題の関係省庁である法務省から呼ばれたのではないだろうかと感じました。

私は自分が用意した陳情資料に則って説明を始めました。今までの動き、海外での動き、実際に辛い思いをしている人々の声、外国人の家族が、元日本人が日本入国の際に指紋採取される苦痛を議長に伝えようとしました。

すると議長は私に少し突飛とも思える質問をしました。
「もし隠れて二重国籍になっても、国は知る事ができないんだよね。」
これは、この問題を勉強している人であれば、当たり前に知られている事実です。こう切り出されると、当たり前の返答しか出来ません。
「その通りです。ただし、在外公館では隠れて二重国籍になった人を探す作業もしています。一般には在外公館にやって来た人に、その国の滞在許可証の提出を求め、その国の国籍の有無を調べます。これで二重国籍の判別がされます。」
すると議長はさらに突っ込みました。
「だけど、その人が在外公館に寄らず、日本でパスポートを更新したら、国は知る事が出来ないよね。」
一瞬回答に詰まりました。どちらが陳情者なのかわからない状態です。議長は、二重国籍であることを知る事が出来るのは本人しかおらず、国がそれを管理するには限界があることを知っていながら、あえて私たち陳情者を使って、それを述べたわけです。誰にでしょうか?その受け答えの一方にいる陳情者ではないことは明白です。私は包み隠さず回答することにしました。
「その通りです。」
議長はこれを受けて続けました。
「わからなければ、それでいいじゃないか、と言っているんじゃないんだ。貴方達の願いも理解しているつもりだ。法律に無理があるという事だよね。そこをはっきりさせたかったんだ。」

私としては最大限の歓迎を受けた様に感じました。この言葉は、私を通り越して、私の見えない位置にいる職員の方々(恐らくは法務省職員も含まれる)に届いたことでしょう。

しかしながら、現状政府は慎重姿勢を崩しておらず、状況は厳しいものがあるわけだから、引き続き請願を続けて下さいとの事でした。請願を続ける事によって、議員がこの問題に目を向け、何がしかの活動が出来る様になり、また政府への圧力になる。議長は議会にて中立であるべきなので、請願を取り次ぐことも出来ないし、むしろその請願を受け取る立場にある。しかし、ここにツルネン議員もいるし、協力してくれる議員も沢山いるでしょう。この陳情をしっかりと受け止めましたので、今後ともがんばって請願を続けて下さい、との事でした。

なお、これは余談になりますが、この議長の陳情の席で、スイス在住の方々から寄せられている、スイスと日本の年金に関する相互協定についても、そういう相互協定を結んでもらいたいという声があることを伝えました。日本はアメリカ、イギリス、ドイツなどと相互協定がありますが、スイスとはその予定もないとの事で、これについても何かの折に対応をお願いしたいと陳情しました。この時に、議長が「これは法務省の担当じゃないな」とおっしゃったので、恐らく同席した職員はやはり法務省関係だったのでは、と推察しています。

今回の陳情とは直接関係なかったのですが、議員との会談の席上で、外国人参政権の問題についても話題に上がる事がありました。この席で同行して下さった鍵谷氏が、ご自身の専門である外国人入管行政の実情と重ねながら、国会議員にお願いしたい事があると述べられました。それは、在日外国人の生活実態をまず把握してもらいたい、その実態が参政権を語る以前の問題が解決されないままでいるようである。例えば、日本人と外国人の対話をスムースにするような行政的配慮とか、現場が望む声も国会議員が汲んで欲しい。そうした土台の部分がしっかりしないと、参政権や国籍付与といったこと自体が机上の空論と化し、現状からますます乖離したものになりかねないだろう、ということでした。

最後に、江田議長を初め、陳情を快く受けて下さった議員とその秘書の方々にお礼申し上げます。また、署名に協力してくださった方々に、この報告が出来ることに大変喜びを感じます。日本版US-Visit法廃止の請願では、今回の陳情に間に合う様にと沢山の方から速達で署名を送って頂きました。そのお気持ちは大変ありがたいものでした。国会陳情が出来るというのは、個人の力によるものではなく、署名などを通した多くの協力者の支援があってのことです。私はその代理を務めているに過ぎません。その一番貴重な協力をしてくださった皆さんに深い感謝の意を捧げたいと思います。また、今後とも変わらぬ署名協力、ご支援をお願い致します。

各議員並びに江田議長に提出した陳情資料はこちら

今回の陳情に触れて下さった関係国会議のBlog
http://tsurunen.cocolog-nifty.com/nikkann/2008/04/post_f517.html
http://www.eda-jp.com/katudo/2008/4/2.html

写真左より、鍵谷、ツルネン議員、江田議長、高川



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